2014年3月18日火曜日

「アンネ・フランクの記憶」

何気なく開いた小川洋子さんの「アンネ・フランクの記憶」(Kindle版あり)。あっという間に引き込まれて一気に読了。



私も思春期に「アンネの日記」を読んだけれど、小川さんの思い入れはものすごい。アンネをまるで自分の親友のように感じていて、彼女を知る生き延びた人々の話を聞くために旅をするのです。その記録の合間に、ところどころ「アンネの日記」も引用されています。

小川さんの目で見た隠れ家、アウシュビッツ、そして生き延びた人々の当時を語る言葉…どれもこれもが生々しく、何度も涙が出ました。「アンネの日記」は収容所に行く前に終わっていますから、この本にはその後の綴られなかった日々があります。

彼女が書き付けることを願いながらかなわなかった言葉たちの残像を、自分の肌で感じてみたいのだ。-「アンネ・フランクの記憶」より

「アンネの日記」を初めて読んだころに比べれば、様々な映画や本を通してナチスやアウシュビッツに関する私の知識も増えています。昨年はアウシュビッツでガイドを務める日本人の方のお話も聞きました。それだけに、ひとつひとつの描写がより鮮明に頭に浮かび、胸が締めつけられるのかもしれません。小川さんの抑制された筆致がまた素晴らしいのですが。

アウシュビッツ強制収容所の周りに規則正しく植えられたポプラの木々を見て、一瞬美しいと感じてしまった小川さんは自分自身の感情に戸惑い、そののちある種の不気味さを覚えます。

つまり彼らはポプラを狂いなく植えるのと同じ几帳面さで、人を殺していった。-「アンネ・フランクの記憶」より

アウシュビッツの収容所は今は博物館となっていますが、当時没収された眼鏡の山やトランク、刈り取られた髪の毛なども積み上げられたまま残されているとか。その描写もまた、胸に迫ってくるものがありました。

つらい描写もたくさんあり、読み続けるのもきついななどと思いながら、でもこれらは現実なんだ、と思い直す。すべて、私たちと同じ人間がやったこと。どうしてこんなことができたのだろう。理解の範疇をはるかに超えているけれど、この人たちが特別だったわけではなくて、人間は誰でもこういった闇に取り込まれる可能性がある。だからこそ恐ろしい。今まで何度も考えてきたことに、再び思いを馳せました。

人生には考えてもいなかったことが起こるし、事実は小説よりも奇なりとは本当によく言ったものだと最近はしみじみ思います。信じがたい災害や事故に直面することだってあるし、そんなとき豹変してしまう人間もたくさんいる。時代のせいだったり環境のせいだったり、人間はわりとたやすく変化する気がします。自らを省みても。

でも、闇と同時にもちろん光が存在する。アンネたちを支援した人々の一人、ミープさんの言葉です。
we are no heroes, we only did our human duty, helping people who need help.-「アンネ・フランクの記憶」より

当時、ユダヤ人を支援することがどれだけ危険なことだったのかを考えると、この言葉の重みを感じます。

こんな歴史は二度と繰り返してはいけないけれど、差別や紛争は今もさまざまな形で残っていて遠い記憶は次第に薄れていく。自分にできることなど何も浮かばなくとも、歴史の風化を防ぐためにはまず知らなければならないのだと、あらためて考えさせられた一冊でした。

広島大学旧理学部1号館


 

2014年3月14日金曜日

ライティング強化(したい)月間

面倒な確定申告はさっさと終わらせつつ、ちょっと余裕を持って過ごせるかな…と思いきや3月もてんてこ舞い。年度末ということもあるんでしょうか。たまには仕事のことを。

ここ最近はずっと特許英訳のお仕事を中心にしているのですが、英語を書けば書くほど気になる点が出てきて、ちょっと集中的に勉強時間もとりたいと思っていました。そんな中、タイミングよくプロが集まる勉強会に声をかけていただき、いろんな方の訳文を見たりしながら非常に有意義な時間を過ごすことができました。以前、私が大阪で開かれたセミナーに出席したときに知り合った方と、この広島の勉強会で再会するという思いがけない出来事も(^^)

良い機会だったので、勉強会に合わせ気になっていた本の再読を進めました。和訳するためにたくさんの英文を読んできていたとしても、いざ自分が書くとなると盲点がたくさんあるんですよね。読むのと書くのでは大違い。以前さらっと読んだはずの本も、実際に英訳を多く手がけるようになってからの視点で読むと「ああ、コレ!」とツボにはまる点がたくさんあったり。実践に勝るものはないなーと、しみじみ思います。

中でも、定評のある「技術英文ライティング教本」はやっぱりイチオシです。レイアウトも見やすいし、工業英検の入門書としてもぴったり。日本語に引きずられず、簡潔で正確な英文を書くための基本。リライトを重ねていく過程などとても参考になります。ライティング練習問題も全て解きつつ一気に読み、頭の中が整理される感じがして、この「集中的にやる」ということが大事なのかもしれないな、と感じました。



マーク・ピーターセン氏の人気シリーズ第3弾「実践 日本人の英語」は、新書なので気軽に読める上に、技術英語に生かせる点も、上記のライティング教本と重なる点も意外に多くあって、両方を併読することで効果が上がったと思います。日本人が間違えやすい身近な例ばかりなので、読み物としても純粋に楽しめます。この中に登場するなぞなぞですごく気に入ったものがあったので、次の飲み会などの機会にしたり顔で披露する予定。



そして「マスターしておきたい技術英語の基本」。これも英訳を手がけるようになる前からパラパラ読んではいたのですが、今あらためて読んでみると自分がよく頭を悩ませる点についてとても分かりやすく整理されています。もっと早く読み返すべきでした。例えば「実現する」という日本語があったら「realize」が反射的に浮かんでしまったりしませんか。何を実現するのか? その目的語によってふさわしい訳語のバリエーションがこんなにありますよ、ということを教えてくれる本。例文も多く、リファレンスとしても常に手元に置きたい一冊です。



他に読み始めているのは「英語のあや」「間違いだらけの英語科学論文」など。どちらも勉強会でオススメされていた本で、とても面白そうです。集中的な自主練は、毎日の仕事に即反映できる点もあるし効果が肌で感じられて楽しい。お世話になっている方が「本に書かれている内容を真の意味で身につけるためには、少なくとも3回の精読が必要と感じています」と仰っていたのですが、真実かもしれないなと身をもって感じています。そして、自分で書いてみることが必須だなと。

どんなに忙しくても、お風呂のときとか寝る前、1日10ページくらいなら読めるんじゃないだろうか、そう考えて実践してみた数ヶ月でした。そうすれば300ページの本なら1ヶ月で読了できます。そう理想通りにいかなくても、読んでいるうちに面白くなってどんどん読み進めてしまうこともありますから、実際には1ヶ月もかからないですね。

こうして勉強モードに火がついた瞬間は貴重なので、少しがんばっておきたいなーと思います。昨年、知的財産管理技能検定を受けたときにはちょっと燃え尽きてしまったので…(^-^;)

(そういえば何も書いていませんでしたが、昨年の知財検定は無事受かり、放送大学の単位も全てとりました。イェイ)

やりたいことはいろいろあるのですが、ひとまず今はそろそろ山に登りたいなーなどと妄想中。

ガジュマルも元気です