最近、山行メモにはヤマレコを使い始めたのですが、この縦走はちょっと特別だったのでブログにも残しておこうと思います。詳細なマップやコースタイムについてはヤマレコへ。
日帰りもできる大阪行きだったけど、せっかくだからどこか登れないかな…と考えていたときに読んだ、新田次郎の
「孤高の人」がきっかけでした。実在の登山家、加藤文太郎の人生をベースにした小説です。もともとは
漫画版のほうを読んでいたのですが、原作とはだいぶ違うと聞き、漫画の後に小説を読みました。これが、とても面白かった。
一年前の私なら楽しめなかったかもしれません。でも今はアルプス周辺の地名も少しずつ覚え、GWに訪れた上高地や横尾の岩小屋など知っている場所も出てきて…景色を目に浮かべながら、一緒に旅することができました。
そんな文太郎さんが、ある日歩いたルートなのです。全て歩き通すと約56km、累積標高差約3000m。私はそれを2日に分けたわけですが(結果的に距離も短くなりました)、文太郎さんはこれを1日で歩ききり、さらにその日のうちに歩いて戻ったそうです。つまり、往復。変人ですね(笑)
事前に山と高原地図を見ながらコースを組んでみましたが、私の足ではどう考えてもきつい。でも宿泊場所が摩耶山か六甲山に限られるので、1日目は摩耶山まで頑張るしかありませんでした。荷物はできるだけ減らし、約10kg。舞子駅近くに前泊して、始発で須磨浦公園駅へ向かいました。今思えば、六甲全山縦走大会ではこの荷重がないわけですね…。
累積標高はかなりあるものの、ひとつひとつの山は低山です。木陰が多く、その点は助かりました。
楽しみにしていた須磨アルプス。すごく格好いい眺めだった!ここでうっとりして、ちょっと時間を無駄づかいしてしまいました。またゆっくり行ってみたいです。馬の背でお茶でも淹れたい。
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一気に眺めが変わる |
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無事、渡りきったところ |
荒熊神社からの眺め。一番奥に見える山から登ってここまで来ました。この時点でまだ11時くらい。
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ずいぶん歩いたなー |
高取山の山頂は、神社になっていました。文太郎さんがこよなく愛し、しょっちゅう登っていた山だそうです。漫画版では「高鳥山」という架空の山として出てきます。
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山頂にはこだわらず通過 |
この後の菊水山あたりが一番きつかった…。縦走らしき人はほかに見あたらず、毎日登山の地元の方々も日が高くなるにつれ姿が見えなくなり。孤独との戦いでした。太陽が顔を出して嬉しい反面、気温もどんどん上がり、順調だったペースも徐々に落ちてきました。おまけに15時ごろで2.5リットル持っていたお水を飲み干してしまった!鍋蓋山のあたりでした。さっきまで何度も見かけた自販機がない…どうしよう、と焦りながら、大龍寺で自販機を発見。水の減りの早さに、もっと早く気づくべきでした。
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生き延びた!と思った |
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これだけ買い足しました |
この辺にケーブルカーとかあったら、きっと乗ってしまっていたと思います。それぐらいきつかった。菊水山についたのが14時ごろ、そこであと5時間ほどある…と考えたら、気が遠くなりました。逃げ道がなかったから進めたようなものです。
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摩耶山の登りもなかなかきつい |
だんだんと、足が上がらなくなってきます。予定よりだいぶ遅れて、摩耶山・掬星台への看板が見えてきました。気づけばだいぶ暗い。ガサゴソっという音がするたび、ビクっとします。イノシシ、いたのかもしれないです。目が慣れてしまって、ヘッドライトをつけるのも忘れていました。
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まっくら |
日本三大夜景をうたう掬星台はカップルだらけで、早々に退散。ドライブデートで登るような山だそうですね…どうりで誰にも会わないはずだ。そしてやっと着いたホテル。生き返った気分でした。あまりの疲労に、明日はこのままロープウェイで下りようかな、と考えたり。
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オテル・ド・摩耶 |
1日目の記録。沿面距離23.5km、歩行時間13.5時間、累積標高約2000m。重いザックを担ぎ1日でこれだけ歩き登ったのは、初めてのことでした。
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ジオグラフィカの記録 |
町で買ってきた神戸牛のお弁当を食べながら、ビールでひとり乾杯をするうちに、気づけば地図を広げて次の日のコースタイムを検討し直している自分がいました。我ながら立ち直り早い!(笑) 次の日は朝から大雨の予報で、夜は梅田で飲み会の予定でした。せっかく呼んでいただいた飲み会には何としても遅れたくない…。宝塚まで歩く予定でしたが、一番雨がひどそうな早朝の出発を遅らせ、有馬温泉に下山することにしました。結果的に、正解だったと思います。
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雨上がりの森は気持ち良かった |
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途中、三国池へちょっと寄り道 |
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神秘的な三国池 |
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紫陽花も、あちこちに。 |
六甲山ホテルの旧館が、趣があり素敵でした。
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西洋にあこがれた時代のもの |
六甲ガーデンテラスでは、そのメルヘンぶりに驚いたり…後半は、観光名所のような場所をちらほら通るので面白かったです。
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ピーターラビットの家 |
1日目よりはだいぶ楽でした。ただ、いつもと違うこの疲れ方というのは、アスファルトを歩く場面も多いことが関係しているかも、とも思いました。1日目も、山を登って下りてまた次の山まで、街なかを歩く場面が結構ありました。
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そろそろ最後の登りへ |
一度は諦めかけた縦走、六甲最高峰にたどり着けたときは本当にうれしかった!よくやったー私!と、ちょっと泣きそう。なんというか、ほとんどメンタルな戦いだったような気がします。アルプスとかだったら他にもたくさん人がいるものですが、ひとりって、ほんとに孤独だな…なんて訳の分からないことを思っていました。それでも、いつかまたやりたいなどと思っているのですから、私も変人かもしれません。
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やったー! |
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最高峰からの眺め |
有馬温泉への道は、整備されていてとても快適でした。でも、下りで膝がだいぶ痛み始めました。素直にストック使えばよかったかもしれません。30分に1回くらい立ち止まってしまう。文太郎さんも有馬に下りたりしたこと、あっただろうな。
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ベンチもたくさん |
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昔の人に思いを馳せる |
やっと下山口。予想外の展開もありましたが、無事に歩き通せてよかった。今回、「どこから来たの?」「須磨浦公園から…」「はあ?!」みたいなやり取りを何度かしましたが、大会以外で全山縦走する人って珍しいんですかね…てっきり、もっとお仲間がいるものかと思っていましたが、結局ひとりも会わなかったです(^-^;)
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有馬の下山口 |
温泉、どこで入ろうかなーなんていろいろ調べていましたが、下山口の目の前にあったかんぽの宿に吸い込まれました。とにかく早くほぐしたい…。
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かんぽの宿 有馬 |
温泉街を歩くのも楽しかったです。今回は通り過ぎただけですが、またゆっくり来てみたいな。
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源泉があったりします |
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素敵なお店もたくさん |
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有馬川 |
そして楽しみにしていた飲み会に向かったのでした。初対面の方もいらっしゃる飲み会だったのですが、梅田の町でお店を探して迷っていたところ「もしかして、うっちーさん?」と、初対面の方が私を見つけてくれてびっくり(笑)。昼間に六甲山頂で撮った後ろ姿の写真をInstagramにUPしていたのですが、それを見ていたから分かった…と。そりゃ目立つ格好ですけど、それにしてもすごい。忘れられない出会いとなりました。最後の最後までほんとうに楽しい旅だった!
ちなみに、有馬温泉から大阪までは電車で行こうとするとなかなか面倒なのですが、調べてみたら直行バスが1時間に1本くらいありました。有馬温泉駅で駅員さんに聞いたら、とても丁寧に乗り場を教えてくれました。神戸の人たちは、ほんとうに皆親切だったなぁ。どうもありがとうございました。また行きます。
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大阪行きの切符 |
山登りはもちろんなんですけど、こうして知らない町をつないで歩くのも楽しいものですね。リアルRPGみたいです。お店を見つけたときには何が売ってるかな?とワクワクするし、町の人とのちょっとした交流もある。そんなこんなで、山にこだわらないロングトレイルにも興味津々な今日この頃です。