2014年4月13日日曜日

「英語で読む村上春樹」-贅沢な翻訳ワークショップ

昨年度は時々しか聞けなかったNHKラジオ講座「英語で読む村上春樹」。今年度は「踊る小人」と「トニー滝谷」だそうです。「トニー滝谷」は読んだことがあり印象に残る作品だったので、またちょっと聞いてみようかなと手を伸ばしました。講師の方が試訳をつけたというお話にも惹かれました。

春の風物詩

テキストの構成は昨年度に比べて見やすくなっています。表現のポイント解説が同じページにあるので、行ったり来たりする必要がありません。

今回特筆すべきは翻訳ワークショップのコーナーがあることです。30分の番組中、半分ほどを占めています。最初の10分程度が通読と全体の解説、15分ほどが翻訳ワークショップ、そして最後にコラム的な内容が5分ほど。テキストをそのまま読み上げるような場面はほとんどないので、放送とテキストそれぞれを存分に楽しめそうです。

今回の作品も、出版済みのアメリカ版はジェイ・ルービン氏の翻訳です。講師の新元先生が直訳に近い試訳をつけてくださっており、そこからルービン訳へのルートをたどるという構成。このようなルートを見せていただけるのは、とても贅沢なことと感じます。

文学作品ですし、ルービン訳のほうが凝った言い回しになったりするのかと思いきや、むしろシンプルで力強いことのほうが多いです。例として一文だけ引用させていただきます。

「それでも小人は休むことなく踊り続けた。」(村上氏の原文)
「Still, he kept dancing without a break.」(新元先生の試訳)
「But nothing could stop him.」(ルービン訳)

いくつものパラグラフがこうして並べられており、比較するととても興味深いです。読めば読むほどうなってばかり。こうして見ると、躍動感とか臨場感のようなものがよく分かる気がします。

巻末の連載も面白そうで、テキストを買ってからまず一気に読んでしまいました。

今期はできるだけ聞いていけたらと思います。が、なかなか習慣化するのは難しいのですよね…。私は一回目からさっそく本放送も再放送も聞き逃し(おいっ)、ストリーミングにお世話になりました。何ともありがたい時代です。

一週間前の番組ならここで聞けます。登録が必要になってしまったので、ちょっと面倒ですけど。
NHKゴガク

村上春樹ファンでなくとも楽しめる内容で、翻訳にかかわる方には特にオススメです。

 

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