最近読んだ本がとても面白く一気に読んでしまったので、メモしておきます。
ライティング本をいろいろ読んできている方なら、目新しいことばかりではないと思います。工業英検などでも求められる Plain English の原則が丁寧に述べられていて、良い復習にもなります。
この本で特に良いなと感じたのは、「日本語の論理」と「英語の論理」についてしつこいほど具体的に丁寧に述べられている点です。なぜしつこいかといえば、日本語を使う私たちにはその「論理の違い」がなかなか意識できないためです。ケリー伊藤さんがそう書いてらっしゃったのですが、確かにそのとおりだなと思います。
ひとつ例を挙げると、「雨が降ったので外出できなかった」という日本語を見て、日本人なら特に違和感は感じないと思います。でも英語を話す人から見れば「なぜ雨が降ったからって外出できないの?」となるわけです。傘をさしたりレインコートを着たりすればいいじゃない、と。なので、これを英訳する際には「雨が降った」ことと「外出しなかった」ことを因果関係のようにつないではいけないということです。
言われてみればなるほどと思うけれど、言われないと気づかない。そんな「論理」についての実例がたくさん載っていて、とても興味深く面白く読めました。日本語がダメとか英語が優れているとか、そういう話ではなく、それぞれ違う論理を持っているのだということです。
翻訳の仕事をしていると「直訳か意訳か」という議論をよく耳にします。しかし「元の原文の意味・アイデアを伝える」ことが大切であって、直訳か意訳かという区別はないと仰る言葉に心から同感です。とはいえ、実務の中ではクライアントからの要望に添うことももちろん大切ですが。
翻訳に関する本でも技術英語に関する本でもないので、そのまま実務に全てを反映できるわけではありませんが、本質的なところを考え直す良いきっかけになる一冊でした。起承転結は日本語の論理であって、英語を書く際には忘れなさい、一番大事なところから書きなさい、ということについても全編を通して具体例を挙げつつ強調されています。日本語には意味のない接続詞がいかに多いかということも。
また第6章の練習問題は、すべて広告の英訳です。広告は短くインパクトのある文章でなければならないため、Plain English の表現収集の宝庫だというわけです。キャッチコピーや広告関係の翻訳を手がける機会がある方には大いに参考になるのではないでしょうか。
印象的だった例文を挙げておきます。シンプルな英語ほど力強くリズミカルだというのは、NHKラジオ「英語で読む村上春樹」を聞いていたときにも実感したことでした。
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(原文) 私は昔とは違う。
(日本の参考書の英訳) I am not what I used to be.
(自然な英文) I have changed.
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上記日本の参考書の答えが英語として意味を成さない理由についても本書の中で語られていますので、ぜひお手にとってみてください。「時制」も日本人が苦手とするところですね。
ちなみに、Plain English についてケリー伊藤さんがまとめたページが、以下のリンクで見られます。
読んでみます!
返信削除お時間出来たらぜひ(^^) 楽しんでもらえると良いのですが…
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