2013年8月17日土曜日

「本の雑誌」-校正・校閲の現状

予約して楽しみにしていた「本の雑誌2013年9月号」、校正・校閲特集ページを一気に読み終えました。特集は20ページ強。


私は翻訳業界に入る前、5年ほど校正者として仕事をしていました。翻訳会社に入ってからもしばらくはチェッカーとして校正の仕事をし、フリーランスになった今も時々お引き受けしています。自分の翻訳原稿はもちろん客観的なチェックを心がけていますし、最近ある冊子の校正を担当したばかり。そんな経緯もあり、「うんうん」と頷いたり「ドキッ」と自らを省みたり、なかなかスリリングな内容でした。

赤線だらけになってしまい、引用したい箇所は山のようにあるのですが、それは実際にお手にとっていただくとして。冒頭の「校正・校閲担当者座談会」には身近な話題が多く、ぐいぐい引き込まれました。新潮社、早川書房、鴎来堂それぞれの校正担当の方々。30年以上校閲一筋、などというキャリアの方々のお話には重みがあります。「優秀な校正者っていかに間違いの記憶をいっぱい持ってるかなんですよ」という言葉には大きく頷きました。

インターネットの普及による入稿形態の変化、それに伴う校正・調べもののやり方の変化なども興味深いです。会社の棚には信頼できる紙の資料がたくさん揃っているのに、若い校正者はウェブ検索に頼りがちで、どの本に何が書いてあるかすら把握できていないとか。これは翻訳の仕事でもよく指摘されていることで、どの業界でも似たような流れがあるのだなと思いました。自分も耳が痛いです。ただし、事典類の出版が減っているのも確かであるとのこと(インターネットの普及で売れなくなってしまったため)。このような問題は過渡期にあり、今後どんどん変化していくのではないでしょうか。

そして、校正は「検閲」ではなく「サポート」なのだという重い一言。校正者は控えめであることがとても大切で、著者の自己表現を荒らすようなことをしてはいけない。これは当然のように見えて、なかなか線引きが難しい部分でもあると思います。実際、著者側からのお話も載っています。サポートのつもりで入れた赤が著者にはそう受け止めてもらえなかった、そんなこともあるのではないかと。

言葉に関わる仕事をしている方なら読んでおいて損はない内容だと思います。校正、執筆、翻訳、どんな仕事であっても「言葉と向き合う姿勢」には共通するものが多いはずなので。

冒頭の書評で紹介されていた「誤植読本」という本が、これまた面白そうでした。

 

 

2 件のコメント:

  1. 今日、長く終末期医療に携わっておられる大津秀一さるの著書を読んでいたのですが、いま【校正はサポート】の言葉が心にしみました。
    終末期を看取るお医者さんの患者に寄り添い理解しようとする姿勢に似たものを感じます。

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    1. なるほど、そんな見方もあるのですね。あけみさんらしい、優しい視点ですね(^^) 人間は皆自我をもっているので、控えめにサポートするというのは思ったよりも難しいことなのだろうなと思います。

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