東日本大震災を体験したり、肉親が脳卒中で倒れたり、大切な友人を若くして亡くしたり、登山中の事故をたくさん見聞きしたり、自分自身が救急車で運ばれたり…そんな経験をする中で、一度きちんと救急の基礎知識を身につけたいなと思っていました。
心肺蘇生の知識や技術など、一生使う機会はないかもしれませんし、ない方がもちろん良いのです。でも万が一、そんな状況に居合わせたとき…何かできたはずなのに、と思うのはどれだけ無念なことかと思います。大切な人だったらなおさらです。講義でも言われましたが、大抵そういう緊急の状況での第1発見者は救急隊などではなく一般人ですし、救急車が到着するまでの5~6分の間の応急処置によってその後が大きく変わってくることも多いと聞きます。(特に脳の後遺症など)
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そんなわけで、日本赤十字社の救急法講習を受けてきました。これは全国各地で開催されていて、誰でも受講できます。受講してとても良かったと感じたので、忘れないうちにメモを残しておこうと思います。私自身も、どんなことをやるのかな?ついていけるかな?と不安だったので。
今回の広島は、基礎講習が1日(4時間半)、救急員養成の講習が3日間(6時間×3)でした。救急員養成講習は、時間を長めにとって2日間で終わることもあるようです。受講料は基礎講習が1500円、救急員養成講習が1700円。これはほぼテキストや教材などの実費だと思います。
充実のテキストが2冊と、市販もされている赤十字のポーチ、キューマスク(人工呼吸で使用するマウスピース)2個、三角巾2枚、保護ガーゼ2枚などが配られます。
そのまま貰えます |
【1日目】
学科が1時間ほど、あとは実技。基礎講習の内容は、主に心肺蘇生の方法とAEDの使い方です。傷病者を見つけたとき、まず自分の身の安全を確保することの大切さや、バイタルサイン(生命の徴候)の見極め方などから教わります。現在、呼吸はお腹の動きで確認するのですね。
呼吸が止まっていたら心肺蘇生が必要です。これを直ちにすることが、脳に後遺症を残さないために非常に重要とのこと。医師でない私たち一般人は、死亡の判断を下してはいけません。すなわち、救急隊が到着するまで心肺蘇生は絶対に続けなければならない。他にやめていいケースは、傷病者の意識が戻ったときと、自分の身に危険が迫ったとき。
心肺蘇生は基本的に胸骨圧迫(胸の真ん中を強く押す)30回と、人工呼吸2回の繰り返し。人形を使って実際に皆やります。これがかなり体力を使い、汗がにじんできます。実技は2人1組なので、その間に「AEDを持ってきて下さい」とバディ(相方)にお願いし、AEDが届いたら心肺蘇生を交代してもらう。とにかく心肺蘇生の手は止めてはいけないのですね。
経験談として、意識を失った人を見つけて「誰か119番とAEDをお願いします!」と叫んだら、誰も動いてくれなかったという話も聞きました。これ、とてもよく分かりますし、周囲の人たちを単純に責めることはできないと思います。自分もとっさに動けるかどうか自信がないです。誰かの目をきちんと見て「あなたは119番をお願いします」「あなたはAEDを」と言う必要があるわけですね。一斉メールと個人宛メールの違いにも似ているなと思いました。緊急時であっても(あるからこそ)誠実な意思疎通は大切です。
経験談として、意識を失った人を見つけて「誰か119番とAEDをお願いします!」と叫んだら、誰も動いてくれなかったという話も聞きました。これ、とてもよく分かりますし、周囲の人たちを単純に責めることはできないと思います。自分もとっさに動けるかどうか自信がないです。誰かの目をきちんと見て「あなたは119番をお願いします」「あなたはAEDを」と言う必要があるわけですね。一斉メールと個人宛メールの違いにも似ているなと思いました。緊急時であっても(あるからこそ)誠実な意思疎通は大切です。
AEDはあちこちで見かけますが、どういうものかよく分かっていませんでした。Automated External Defibrillator (自動体外式除細動器)の略ですが、心臓に細動(痙攣のようなもの)がある場合にそれを取り除くものだそうです。心臓に刺激を与えて動かすためのものではない。だから、必ず心肺蘇生とセットでおこなうことが大切とのこと。細動を取り除くことができたら、すかさずまた胸骨圧迫を始めなければなりません。
簡単にまとめましたが、細かな注意点はもちろん他にもたくさんあります。これを使える人が増えれば、助かる命は確実に増えるはず。正しい知識を身につければそれほど難しいものではないと感じました。
実際に街なかで人が倒れていたりした時に、一番のハードルは一歩踏み出せる勇気があるかどうかなんですよね。「私にできるのか」という。責任も伴いますし。正しい知識と技術は、それを少し後押ししてくれると思います。
この基礎講習は単独でも受講できますので、まずはこれだけ、ということも可能です。最後に小テストもありました。10問の選択式で、まじめに受けていればまず落ちることはないと思います。
【2日目】
この基礎講習は単独でも受講できますので、まずはこれだけ、ということも可能です。最後に小テストもありました。10問の選択式で、まじめに受けていればまず落ちることはないと思います。
みんな真剣 |
【2日目】
午前中はほとんど学科、午後は実技。2日目以降は、三角巾の使い方を徹底的に教わることになります。こんなにも多様に使えるんだ! と感動すらおぼえました。
学科では、急病やけがの種類について一通り学びました。脳卒中は私にとっては身近な病気ですし、熱中症などもタイムリーでしたね。病気の徴候や手当の仕方、予防法など。けがは、切り傷などに始まり骨折や熱傷、生物による咬傷(これも山では切実)などまで。
実技ではまず止血法について、傷を直接押さえる直接圧迫止血と、心臓に近い止血ポイントを押さえて血流を止める間接圧迫止血を教わりました。この止血ポイント、押さえると本当に脈が止まるんです(あたりまえですけど)。ちょっと怖かった(^^;)
その後は2人1組で、ひたすら三角巾。まずは包帯法。
○包帯として、下記の傷に保護ガーゼを固定する
1. 額の傷
2. ほほの傷
3. 頭頂部の傷
4. 胸の傷
5. 肩の傷(2枚使用)
6. 手の甲の傷
7. 前腕の傷+包帯をした腕を吊る(2枚使用)
8. 下腿の傷(自分の足で)
9. 膝の傷
残りは3日目へ続く。ただの三角の布で、これだけのことができるんです。保護ガーゼをきちんと圧迫して、決められた手順でピシッときれいに巻くことが求められます。
テキストにはもっと応用編もたくさん載っていますが、これだけの実技を繰り返すとかなり三角巾の扱いには慣れてきます。二つ折り、四つ折り、八つ折りもササッ。2日目の時点では、こんなに覚えられない!とかなり不安でしたが…
【3日目】
午前中は学科を10分ほどやったら、すぐに実技。とにかく実践重視ですね。やっぱり、体で覚えるのが一番身につくと実感しました。
三角巾の続きで、今度は固定法です。
○骨折や捻挫の手当として、手足の固定に使う
1. 前腕の骨折
2. 下腿の骨折
3. 膝の骨折
4. 鎖骨の骨折
5. 足首捻挫の固定(自分の足で)
午後は搬送の実習をやりました。けがの手当と同じくらい大事な「搬送」。担架の正しい扱い方、人を乗せる場合や運ぶときの注意点などを学びます。実際に運んでみると、かなり重いんですね~。落とすわけには絶対にいきませんから、とても緊張しました。毛布を担架の代わりに使う設定で傷病者役もやりましたが、少しの揺れや傾きで不安になったりということも実感しました。
残った時間はまた三角巾の復習。苦手なところは何度も繰り返し、先生に質問もできます。だんだんと手慣れてきて、最初に感じていた不安も次第になくなりました。
【4日目】
午前はまず残りの学科。災害救護に関するものでした。広島はちょうど1年前に大規模な土砂災害があったばかり。そんな時に備えて何ができるのか、何をすべきなのか。「正常性バイアスの呪縛」という言葉は深く胸に突き刺さりました。震災でも感じたことです。「まさか自分には起こらない」「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信。一年前、それで避難をせず亡くなってしまった一家のお話などもありました。
次に総合演習。傷病者役、発見者役などを決め、グループに分かれてシミュレーションをしました。今回は奇遇にも山での滑落事故という設定。骨折している人、切り傷だけの人、一見何ともないけど意識を失ってしまう人…などなど、発見者役には見えないところで役割が決められ、適切な対応ができるかを見られます。三角巾での包帯法や副子を併用した骨折の固定、担架での搬送など、これまで学んだことを駆使して皆で力を合わせて動きました。その後、お互い意見交換をして反省会のようなものを。
残りの時間はまた三角巾の復習。再び先生の実演を交えながら午後の試験に向けて総復習です。とにかく何度も何度も手を動かしたので、三角巾の使い方は実用レベルで身についた気がします。軽く学科の復習もやりました。
そして、午後はいよいよ試験です。学科試験は40分、今回は記述式もあります。でも先生が強調する重要ポイントをしっかり聞いていれば、まず大丈夫だと思います。合格ラインは8割。
一番緊張したのはやはり実技試験です。止血法、包帯法、固定法を全部で8つほど実演して、2人の先生にチェックされます。包帯法には時間制限があり、三角巾を1枚使うものは1分半、2枚使うものは2分半です。この時間制限で無駄に緊張してあせるのですが…
でも、何度も練習を重ねていたおかげで、大きな問題なく終えられたように思います。バディも3日間同じでしたし。学科もおそらく満点とれたはず…!
と大きな口を叩いていますが、落ちたら笑ってください…。この試験に受かっていれば、「赤十字救急法救急員」という資格がとれることになっています。3年ごとの更新制です。
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想像以上に長くなってしまいました。ここまで読んでくださった方はきっと「受講してみようかな」と興味をお持ちの方だと思うので、ぜひチャレンジしてみてください(^^)/ 仕事と並行して受講するにはちょっとハードかとは思いますが(毎日ぐったりでした)、私は本当に受講して良かったと感じています。正直、最初は完走できるか不安だったのですが。
何かあったときに実際に動ける、実用レベルでの知識と技術が身につく講座だと思います。講師の方がユーモアたっぷりで、経験に基づくお話もとても楽しかったです。そして日本赤十字社広島県支部のスタッフの方々にも大変お世話になりました。4日間、どうもありがとうございました。
日本赤十字社広島県支部 |
忙しい時間をなんとか工夫されたのでしょうね、お仕事を頑張りながら、登山を愛し、救急法も学ばれて、うっちーさんの心の広さに感心します
返信削除この頃では、山も本格的になられて、羨ましいです。
最近は、やっと仕事のスケジューリングがうまくできるようになってきました(^^) 仕事以外にも大切にしたいことはたくさんあるので…。これらがどんなふうに繋がっていくのか、役に立つことがあるのかは分かりませんが☺ 心はあまり広くないので、もっと広くなりたいです~。
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