どこかで「初心者向けの本」と紹介されていたのを見かけましたが、既に数年仕事をしている方にも得るところの多い本だと思います。また、様々な分野を概観してみたい、専門を作っていきたい、という方にも、向き不向きを考える上で良い入り口になるのではないでしょうか。実際の仕事で遭遇しがちな、不完全な原文などを取り上げてあるのも面白いです。
「文化系」「電気系」「IT系」「化学・バイオ系」「電子工学系」それぞれの技術翻訳者からの経験談とアドバイス(最後のお二人は特許)。具体例が多くて非常に興味深かったです。それぞれの節は著者が違って独立しているはずなのに、やはり共通している部分が浮かび上がってきます。
ツールやマクロなど効率化も大切ですが、本質的な部分での研鑽をおろそかにしてはいけないなと改めて気を引き締めました。
原文が何を言いたいのかを考えて、それをターゲット言語で「書く」。そのためには語学力だけでなく、技術的な専門知識、論理を読み解く力、的確に表現する文章力など、さまざまな能力が必要です。皆さん「読む」「書く」だけでなく「聞く」「話す」にも言及してらっしゃるのが印象的でした。翻訳者でも、過去に通訳をやっていた方って意外と多いですね。英日、日英どちらかではなく、双方向の仕事をしていったほうが良いというアドバイスや、機械翻訳との住み分けのお話もあります。辞書との付き合いかたも見直すきっかけになりました。
勉強するべきことは果てしなくありますが、まずは目の前の仕事に誠実に取り組みつつ少しずつパワーアップしていけたらいいなと、背筋が伸びる一冊でした。
背筋は伸びても、こいわしの季節 |
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