2013年12月7日土曜日

「広島・長崎の記憶」-世界の虐殺と記憶の継承

平和記念公園にある広島国際会議場で開催された、国際シンポジウム「広島・長崎の記憶 -世界と共に考える次世代継承の道-」に参加してきました。会場は2階席までほぼ満員。中高生や大学生らしき姿もあちこちに見られました。詳細は以下のリンクに。
「広島・長崎の記憶」 世界の虐殺を3人が語る (中国新聞/ヒロシマ平和メディアセンター)

「日本では先日、特定秘密保護法というものが可決された、そんな中ですが、伝えるべきものはしっかり伝えていきたい」という言葉と共に開始。

右は同時通訳を聞く機械

翻訳者でもある基調講演の早川敦子先生が急病とのことで、非常に残念でした。一日も早いご回復をお祈りいたします。代読で読み上げられた講演内容は、フランクルやエヴァ・ホフマンにふれたもの。中でもホフマンのエッセイ「記憶を和解のために」からの、マイダネクの収容所で亡くなったエルズーニャという少女の詩には胸をえぐられる思いでした。両親を殺され、自分もいずれ死ぬということを悟ったエルズーニャが、靴の中に隠して遺していった詩だそうです。

むかしむかしのことでした。
名前は小さなエルズーニャ
ひとりぼっちで死にました。
マイダネクは父さんの
アウシュヴィッツは母さんの
命が消えた場所でした。
ひとりぼっちのエルズーニャ
その子も死んでゆきました。

今、私たちに届く「未来への記憶」。こっそりと詩を書いて靴にしのばせる小さな少女の姿が目に浮かぶようでした。名も無きアンネ・フランクが何万人もいたのでしょう。

-------------------

広島市立大学や平和記念館の関係者の方以外に、はるばるルワンダ(イヴ・カムロンジ氏/キガリ・ジェノサイド記念センター副センター長)、ポーランド(中谷 剛 氏/国立アウシュビッツ博物館公認ガイド)、カンボジア(ソピアロム・チェイ氏/トゥール・スレン・ジェノサイド博物館副館長)からゲストスピーカーの方がいらしていました(同時通訳つき)。こんな方々の生のお話を聞ける機会はなかなかないと思うので、ちょっと無理しつつも参加できてよかったです。

非常に濃い内容だったので詳細をすべて紹介することはできませんが、何点か印象に残った部分を。


○アウシュビッツ博物館からのゲストは、なんと神戸出身の日本人の方。かつて、アウシュビッツでは生還者がガイドをしていたが、今はガイドの中に戦争体験者はゼロとなった。もちろん中谷さんも体験者ではない。日本人の起用に当初は難色を示されたが、今は唯一の日本人ガイドとして期待を託されている。

「ナチスは民主政権だったんです。当時、最も多かったのは『傍観者』だった」

「日本は(差別などに関して)まだまだ寛容性がありすぎるように思う。『このくらい構わないじゃないか』という積み重ねが取り返しのつかないことになる場合がある」

一字一句そのままではありませんが、中谷さんが仰っていたことです。非常に突き刺さりました。


○ルワンダでは、虐殺した側とされた側の民族の子どもたちが、今は同じクラスなどで過ごしている。そこでの教育はデリケート。なぜジェノサイド(集団殺戮)が起きたのか、から教え、民族のアイデンティティなどについても教える。イヴさんの「国際社会は当時、ルワンダを見放した(ただの殺し合いでありジェノサイドではない、と言われていた)」という言葉が、重く印象的でした。


○広島のカンボジアに対する支援について。カンボジアの首都プノンペンには「ひろしまハウス」というものがあり、street children の支援などをおこなっている。(全然知りませんでした…)


広島からも、中高生のジュニアライターによる活動などが紹介され(福島県の高校生との交流もあるそうです)、最後にゲストの皆さんが「(客席も含め)若い世代が活動していることに驚き、素晴らしいと思った」などと感想を漏らす場面もありました。ジュニアライターの松尾くんと木村さん、堂々としていて本当に見事な報告だったと思います。

---------------------

広島市立大学教授、広島平和研究所副所長である水本和実氏の言葉が印象に残っています。

「どういう瞬間に、何をきっかけに平和は壊れてしまうのか、ということを歴史に学ばねばならない。けれど知識だけではダメで、知恵に繋げていかねばならない」

どうすれば同じ過ちを犯すことを防げるのか、ということを私たちは常に考えていく必要があるのだと思います。いずれ若い世代に何かを尋ねられたとき、何をどう答えることができるだろう。自分の勉強不足を痛感しつつも、いろいろと考えるきっかけをもらえた一日に感謝です。


余談。ポーランドでは、日本のことを話すとき「桜の花咲く国」で100%通じるそう。毎年8月には「今日、桜の花咲く国で追悼式典がありました」と報道されるそうです。なぜだか心にしみ入るものがありました。母国を世界に恥じるようにはなりたくないなと。


 

0 件のコメント:

コメントを投稿