2014年12月11日木曜日

新訳「嵐が丘」のココロ

『「翻訳問答」-競訳と対話』へのアクセスがやけに増えているなと思ったら、鴻巣友季子さんがFacebookでこのブログを取り上げてくださっていることを知人が教えてくれました。うれしい…

https://www.facebook.com/yukiko.konosu1/posts/975800032449237

ここで鴻巣さんが書かれているSNSの弊害については私も常日頃感じていることだったので、非常に共感を覚えました。同調圧力、予定調和。なぜこの本にそこまで惹かれたのか、自分の中でもやもやしていたものがすっきりした感じです。

そんな鴻巣さんの新訳「嵐が丘」。沖縄の行き帰りでだいぶ読み進めることができ、あっという間に読了しました。私にとってはとても読みやすく味わい深く、一気に読める翻訳でした。

ちょっと調べてみたら、翻訳に関してずいぶんと賛否両論あるようです。原文と突き合わせて読んだわけではないので細かい正誤については何も言えませんが、たとえば「"うべなう"など、今の時代聞いたこともないような日本語」などという批判は的外れだと思います。

少々古くさい言いまわしや文学的表現、それらを時に辞書を引きつつ味わうのは読書の楽しみの一つではないでしょうか。「うべなう」は正直わたしも辞書を引きましたが、新しい表現を知る喜びがありました。

字幕の仕事をしていても「この表現は今の若い人には通じない」と言われたりすることがあります。しかし、「だったら若い人もそれをきっかけに覚えればいいじゃない」と仰った戸田奈津子さんの言葉に私は共感します。もっとも字幕は一瞬で消えてしまうものなので書籍と同列に語ることはできませんし、実際には流れを止めないように気をつかうのですが。それにしても読者や観客に媚びすぎてはいけない気がするのです。

「翻訳問答」の中でも触れられていましたが、「嵐が丘」は書かれた時点からさらに昔の時代が舞台であり、その中をまた回想で遡っていくお話です。だからこそ鴻巣さんは古めかしい言いまわしを選択された。考え抜かれた上での表現なんですよね。

訳者あとがきで翻訳についてのお話を読むのを楽しみにしていたのですが、なんとKindle版にはあとがきがないのでした。これにはガックリきまして、文字通りこんな感じ→ orz 。出版社様、どうか入れてくださるようお願いいたします。

あとがきの代わりに、私が新訳「嵐が丘」に興味をもつきっかけになった一冊を思い出し本棚から引っ張り出してきました。「翻訳のココロ」

ページの隅に折り目がいっぱい

鴻巣さんが「嵐が丘」を翻訳中に書かれていたエッセイや日記がいくつも収録されています。現地を訪れて空気を肌で感じつつ、wine の訳ひとつに悩み、スラシュクロス邸という既訳をどうするかに悩み…。このエッセイを読んでいたころ、どんな新訳になるのかなとワクワクしたのを思い出しました。こうして、新訳を読んでから読むとまた新鮮に楽しめます。

「八十年かかっても俺の一日分も愛せるもんか」というヒースクリフのセリフ。今だったら「一生かかっても」と言い換えられそうですが、当時その地域の平均寿命は二十五・八歳だったそうです。そうなると、「八十年」という数字の持つ意味がガラッと変わってきますよね。そういった細かなリサーチの過程が丁寧に綴られています。

嵐が丘と対になるスラシュクロスを和名にしたかったという気持ちは、とてもよく分かりました。浸透している既訳を変えることを恐れる気持ちも。このエッセイの時点で「スラシュクロス」の新訳は示されておらず、「これが読者に馴染んでくれるといいのだが。いまはひたすら祈るような気持ちである」とほのめかしつつ締めくくられています。やっと読めたその新訳、おおーと唸りましたし、美しい響きで私はとても好きでした。

さらっと書かれているように見える言葉ひとつひとつに、たどり着くまでの果てしない労力。

We have to work so hard to be simple.

という一文が、印象に残っています。


単独でも十分に面白い本ですが、新訳「嵐が丘」を読んだ方には特にオススメしたい一冊です。


 

2014年12月10日水曜日

フルマラソン初挑戦-第30回 NAHAマラソン

毎年NAHAマラソンに参加している友達がいるのですが、「いつか私も行くね!」という約束をそろそろ果たそうと、そして今は沖縄在住となったかつての飲み仲間と再会を果たそうと、沖縄までひとっ飛びしてきました。

広島-沖縄は1日1便らしいです。片道約2時間。福島までの帰省が片道7~8時間なので、こんなのはあっという間に感じます。初日は、空港からマラソンコースの下見ツアーに参加しました。結構起伏の多いコースに悲鳴が上がる…。街なかから始まって、さとうきび畑が広がる風景や海が見えるところもあってワクワク。

この日の気温は17度くらい。広島は朝5度くらいだったのでダウンコートを着ていましたが、沖縄じゃ浮くだろうなーと空港でさっさと脱いでいました。が、街にはダウンの人がたくさん!やっぱり体感温度が違うみたいです。ちょっと風が肌寒くはあったのですが。

42.195kmをバスで回るので、せいぜい1時間くらいかなーと思っていたら2時間半以上かかりました。そういえば那覇って、渋滞がひどいんですよね…昔の記憶が蘇ってきました。ゼッケンの引き替えもものすごい行列で、ひととおり手続きが終わったらホテルにチェックインしてバタンキュー。

こんなところを明日は走るのかー

次の日がマラソン本番。友達のラン仲間とご一緒させていただくことになり、慣れない場所だったのでだいぶ心細さがなくなりました。ほんと色々お世話になって、感謝感謝(^^)

会場まで歩く

7:30に待ち合わせて、みんなでストレッチなどしながらおしゃべり。私以外は皆何度も出場している経験者なので、頼もしい。私だけが人の多さに圧倒されている…(^-^;)

テンション上がる!

8:20に並ぶことになっているのですが、スタートは9:00。こういうときって緊張もあってトイレに行きたくなっちゃうんですよね…並ぶ直前に行ったのに(涙)。

いよいよスタート…してもこの状態。

もうスタートしてます

スタート時点で既にロスタイムが約30分。中間地点の制限時間は3時間15分で、以前ハーフを2時間半くらいで走っていたので余裕かなと思っていました。が、ここまでのロスタイムを全然考えてなかった…!

1km過ぎた辺りか、国際通り

そしてこの後、10km過ぎたあたりでトイレにも寄るのですが、そこもやはり行列。不安もあり給水をマメに取りすぎたかも…あとちょくちょくストレッチも入れてました。写真や動画を撮ってたのが一番悪いですが(笑)

そんな感じでも、何とか間に合うだろう~と抑え気味のペースで来てたつもりでした。「中間点」という看板が見えて、ラインを踏んで「間に合ったー!」と、ちょっと気を抜いた瞬間、「5,4,3…」とカウントダウンが聞こえる。何と、関門はその少し先にあったのでした。「ゼロ~!」の声とともに赤いジャージの男の子たちが道をふさぐ。ランナーたちの悲痛な叫び。

中間地点の関門

こう書いてみると、まあ貴重な体験といえないこともないな…と思います。こんな目の前で関門が閉まるって、冗談みたいw ほんっとうに悔しかったし、周りもみんな「くやしーー!!」と叫んでました。

私の友達は4時間3分台でゴールしてサブフォーまであと4分というものすごい記録だったのですが、あと4分ってほんとうに悔しかったと思います。その隣でこんなことを悔しがっている自分が我ながら滑稽でしたが、いやあこんなに悔しかったの久しぶりです。また絶対に来たい!と思いました。

NAHAマラソンって本当に特別な大会なんだろうなって思います。沿道の応援が素晴らしく多彩で、いろんな演奏をしてくれていたり、子どもたちが踊ってくれていたり。写真や動画、そりゃ撮りたくなっちゃいますよ…。こんな見知らぬ私たちを、どうしてそんなに応援してくれるの?というくらい声を張り上げて励ましてくれる。食べ物や飲み物の差し入れも途切れないし、エアーサロンパスをかけてもらったりもしました。「ありがとねー!」と言いながら何度子どもたちとハイタッチしたことか。あー思い出すだけで楽しい(^^) イヤホンで音楽を聴きながら走ろうか迷っていたのですが、やめて正解でした。こんな大会では、応援を存分に楽しみたい。

ucchysnowさん(@ucchysnow)が投稿した動画 -


沖縄の皆さん、本当に本当にありがとうございました!

結局ハーフの距離しか走れなかったけれど、その間まったく飽きるということがなかったし、ハーフがわりとあっという間で関門が閉じた後も走りたくてたまらなかった。だからこそ悔しさ倍増なのでしょうね。また来たい、という強い動機ができました。

前回ハーフを走った聖湖マラソンからちょっと進歩したなと思ったのは、今回はまったく歩かなかったことです。坂道も、ノロノロとはいえ全部走りました。だからこそ悔し(略

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さて、ゴール後は差し入れてもらった美味しいおにぎりやスープなどいただいて、一旦ホテルへ。汗を流してすっきりした後、打ち上げに向かいました。

牧志駅前

この日はどの居酒屋もランナーでいっぱい。友達の旦那様が予約してくれた穴場のお店へ。たかぎなおこさんの本にも出てきて、気になっていたお店でした。まるで親戚の家に遊びに来たみたい…

貼ってあるNAHAマラソンポスターは2年前のでしたw

いやー、このお店はとっても面白かったです。混んでいて注文が遅いとか難点はあったものの、まあそれは仕方ないかと。一人で切り盛りしているお姉さんがとってもフレンドリーで、待たせてごめんねーといっぱいサービスしてもらっちゃいました。注文したものがなかなか出て来ず、サービス品ばかり出てくるのでほとんどそれでお腹いっぱいに。

島ニンジンとゴーヤのキムチ(サービス)

とうがらしケチャップをかけたふわふわオムレツ(サービス)

そうめんチャンプルー(サービス)

どんだけサービスやねん!って感じですが、これでも一部です。これは注文した山羊肉炒め。山羊肉は初めてでした。沖縄名物だそうですね。少し癖はありましたが、思ったほどではなく美味しかったです。

山羊肉炒め(注文品)

笑いっぱなしで楽しい夜は更けていきました。

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さて、次の日は夜に楽しい再会が控えていたのですが、昼間は久々に那覇散策。

意外に都会ですよね

国際通りもひさしぶり。懐かしい。昔はレンタカー移動ばかりだったので、自分の足で歩くと地理が少しつかめてきます。国際通りをまっすぐ行くと牧志駅に着くことを発見。

ミニ角煮丼とソーキそば…食べきれず

ボリュームたっぷりのランチの後は、沖縄名物のぶくぶく珈琲。もともとはぶくぶく茶というものが有名で、それを珈琲に応用したそうです。ウコンや苦瓜、黒豆などがブレンドされています。癖はそれほど気にならず、美味しくいただきました。

福来福来珈琲、と書きます

その後は首里城公園散策へ。首里城は昔入ったことがあるので、周りをぶらぶら。しかし雨に降られてしまいあまり長くはいられませんでした。この後、沖縄県立博物館・美術館へ行ってみようと思っていたのに、あいにく休館日…しくしく。

城壁が好き

一面赤い

さて夜は待ちに待った再会。写真はほとんどありません…夢中で飲み食いおしゃべりしてたのでしょうねー。東京にいた頃よく飲んでいたメンバーで、本当に気の置けない友人たちなのでめちゃくちゃ楽しかったです。今はみんなバラバラになったけど、まさか沖縄でこんなふうに飲む日が来るとはねー、と感慨深く。私は泡盛をいっぱい飲みました!1杯ではなく、たくさんです。琉球衣装のきれいなお姉さんが席まで来て三線を弾きながら民謡を唄ってくれたり、素敵なお店でした。

ゴーヤビール!苦かった…

シーサーかまぼこで遊ぶ

楽しい時間はあっという間。最終日は、ちょっと国際通りをぶらついてから空港へ。ゆいレールで12分ほどと、格段に便利になりました。

ホテルから海へさよなら

空港でのランチはなつかしのA&W。昔、苦手~!と思ったルートビア、フロートだとなかなかイケルよ~との地元の方の意見にしたがい、頼んでみました。確かにマイルドになって飲みやすかったです。しかし今あらためて飲んでみると、体に良さそうな味ですね。アイスをつついていたら、急にぶくぶく~と泡が立って溢れ出すアクシデントとかありましたが…

ルートビアはおかわり自由

帰りますよ

またね、沖縄

飛行機で広島に降りるときの、山が連なる風景が好きです。初めて見た時も感動したなー。沖縄と比べると、これまた対照的でした。

ただいま、広島