2013年9月30日月曜日

「みちのく未来基金」も第三期生へ

「みちのく未来基金」というものをご存じですか? カゴメ株式会社、カルビー株式会社、ロート製薬株式会社の三社が設立した、東日本大震災の震災遺児の進学を支援する基金です。

私も細々と寄付を続けていて、先日何度目かの報告書が届きました。



私が毎月寄附できる金額なんて本当に微々たるものです。でも、こうして思い出す機会をもらえることに意味があると感じます。震災から二年半。もう三期生のエントリーとなりました。一期生が企画にも参加するようになったというのを聞いて、時の歩みを感じます。四十間近の自分と十代の彼らとでは、時間の流れや変化もずいぶん違うことでしょう。自分の甘ったれた学生時代を思い出すと、過酷な状況を乗り切っている彼らに頭が下がります。

少しずつ、いろんなことが繋がって確実に前進しているのですね。直接力になれることはほとんどないかもしれないけれど、応援している人がたくさんいることを忘れずにいてほしい。つらいことはいくらでもあるだろうし、どれだけ大変かと思うけど、休み休みがんばろう。私も自分にできることは少しずつでも続けていきたいです。

個人でも、少額から寄付できます。一度だけでも、毎月の引き落としでもOK。詳細は下記ページからどうぞ。

みちのく未来基金-企業・団体及び個人さまからのご支援

 

2013年9月27日金曜日

ゴッホ展~縮景園

なんでもない一日のメモ。少し前の話ですが久々のゴッホ展、終了間際にギリギリで駆け込んできました。東京以外で見たのは初めてでしたが、ゆったり鑑賞できていいですね。県立美術館も初めてだったのですが、とても立派な建物でした。ミュージアムショップも充実。

広島県立美術館

縮景園と隣接していることも初めて知りました。縮景園もずっと行ってみたいと思っていたのですが、この日は美術展のサービスで無料で入場できてしまい、得した気分。

美術展を堪能した後、縮景園の茶店でまずは一息。和菓子付きの抹茶を頼んだら、もみじ饅頭が(^_^)

にしき堂のもみじ饅頭


町なかにこんな空間があったのかー、とうっとり。

赤い橋が映える

鯉の勢いがすごかったです。寄ってくる寄ってくる。

人間=エサ

高台から一望。



にらって、こんな可愛い花が咲くとは知りませんでした。



季節を感じる曼珠沙華。

彼岸花とも

木漏れ日、大好きです。



ちょっと忙しい日が続いていたので、久々にリフレッシュできた一日でした。縮景園は美しくてとても気に入ったのですが、虫除けスプレーがあるとなお良いかな。

ツクツクボウシがたくさんないていました。ちょっとした異空間。広島っていいところだなぁと、あらためて、またすこし好きになりました。

 

2013年9月25日水曜日

「風立ちぬ」、そして「ひこうき雲」

ジブリアニメは、正直それほど観ていません。ほとんどが誘われて付き合いで観た程度。今回の「風立ちぬ」も、誘われなければ行ってなかったと思います。でも、これは観ることができて本当によかった。誘ってくれた友人に感謝です。

夢と現実が絡まって織りなされる世界は、ファンタジーよりもずっとリアルでした。刹那的な生き方を選ぶ気持ちも、震災以前よりはずっとよく分かります。登場人物それぞれが、自分の大切にしたいものをちゃんと分かっていて、そして全力で守っている。そんな姿が強く美しかった。「生きざま」という言葉が胸をよぎりました。

もちろん主人公の姿は宮崎監督に重なるものがあり、覚悟と想いが伝わってきました。引退を覚悟して、全ての想いを込めて作ったのだろうなぁ、と。このあたりは、深い考察をされている方がたくさんいらっしゃいますね。

いろんな見方ができる作品ですが、私はラブストーリーとして胸打たれる部分が多かったです。「風立ちぬ」という堀辰雄さんの小説は、この恋愛部分だけなのですね。そこに、全く別人の堀越二郎さんという航空技術者の人生を組み合わせて生まれた作品、ということらしいです。

ラスト近くでは、何だか知らない間に号泣していました。あとからあとから涙が出てきて、どうしよう、と。いまだに、なぜあそこまで号泣したのかよく分からない。いつもならこういう時、エンドクレジットが流れる間に気持ちを落ち着かせて、体勢を立て直すんです。ところが、ここで流れてきたユーミンの「ひこうき雲」…困ったことに、さらに号泣。こういう時、隣に友人がいるときの気まずさといったら(^-^;)

もう一度、いつか観直したい作品です。もう少し冷静に。

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「ひこうき雲」は、もう相当昔の曲です。高校時代くらいに初めて聴いて、大好きになりました。そして、いつの間にかこの曲は自分の中で物語になっていたんですね。絵も浮かびます。治らない病気で入院していた、ひこうきが大好きな小さい男の子。いつもいつも、病院の窓から空を見上げてる。

でも、この映画を観るとあまりにも曲がはまっていて、曲を通して見える風景が一気に変わります。


この日、午前中の講演会で金原瑞人さんがちょうどこんな話をしていました。「人は、文中に男とも女とも書いていなくても、勝手に自分で性別を決めて読み進めているものだ」というお話。この曲も、別に男の子とは言っていないのにいつの間にか私は勝手にそう決めていた。それを自覚させられて、妙なところで午前と午後が繋がった日でした。


でも、小さな男の子の物語も忘れずにいたいな、とひっそり思う。

この日の朝焼け

 

2013年9月24日火曜日

金原瑞人さんの講演会へ

先日、児童書を多く翻訳してらっしゃる金原瑞人さんの講演会「言葉の翻訳と翻訳の言葉」に参加してきました。確か、市立図書館のチラシで偶然見つけた講演会です。広島市の図書館だけで、金原さんの訳書・著書は405タイトルあるとか(!)。

往復葉書で申込み(^-^;)

私が金原さんを知ったのは(正確に言うと、意識したのは)、「翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった」というエッセイ本でした。翻訳関係のエッセイは目につくと必ず読んでいましたが、この本は特にタイトルがユニークで印象に残っていました。ちなみに、芥川賞を受賞した金原ひとみさんのお父様でもあります。



もうお年は60歳前後のはず…と思って開始を待っていると、真っ赤な可愛いTシャツ(後に『時計仕掛けのオレンジ』のデザインと判明)にジーンズ姿の若々しい方がはずむような足どりでステージの上に登場。客席がどよめいていました。皆さんの気持ちが手に取るように分かります(笑)。30代にも見えてしまって。

それから2時間たっぷり、ずっと立ちっぱなしで、面白いお話をたくさん聞かせてくださいました。スライドも何もなしです。話術だけでこれだけの時間、お1人で聴衆を引きつけるのは大変なことだなとしみじみ。笑いもたくさん。普段から大学で教えていらっしゃるせいもあるのでしょうけど、それにしてもすごいです。

翻訳の業界関係者を対象にしたセミナーは何度も参加したことがありますが、これは一般市民が対象でした。それでも会場はいっぱいで、質疑応答も時間が足りなくなるほど活発で。とても新鮮でした。金原さんは、全国あちこちでこういった講演をされているようです(ちなみに無料でした)。本当に本が、文学が大好きで、その面白さをたくさんの人に知ってもらいたい、という熱意を感じて、何だかこちらまで胸が熱くなりました。そして、心から楽しそうなんですよね、お話してらっしゃるときの表情も。少年みたい。

また、外国語の「翻訳」という枠にはとらわれておらず、最近は日本の古典文学を若い世代に紹介するための翻案がとても楽しい、とも仰っていました。若手作家のものは若い翻訳家に譲って、自分は古典に移りつつある…と。近年はサマセット・モームなども訳されているとか。

電子書籍に対する考え方などもとても柔軟で、「読者参加型翻訳」など(半分冗談かもしれませんが)ユニークなアイデアをいろいろと披露してらっしゃいました。とにかくまだまだやりたいことは山ほどある!というパワーが伝わってきました。

印象に残るお話はたくさんありましたが、中でも「翻訳はすべて誤訳である」という言葉には重みを感じます。原書をそのまま正確に伝えるなど絶対に不可能である、と。それを分かっていながら、その中でベストを尽くすのだと。

たとえば英語の「I」。男でも女でも大人でも子供でも使う、無色透明な一人称。英語なら、ラストまで語り手が男か女かを伏せることも可能だけれど、日本語に訳してしまえば「私」「僕」「オレ」必ず何らかの色がつく。「翻訳はすべて誤訳である」とは、そういった意味での言葉です。

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思った以上に長くなってしまったので、まだまだメモはあるのですがこの辺で。とても楽しいお話し上手な方なので、お近くで講演会がありましたらぜひ、皆様も足を運んでみてください。

その際には予習として、このあたりの本を読んでおくと面白いかもしれません。ちょうど最近読んでいた本だったので、重なる内容もいくつか出てきて興味深かったです。絵本翻訳、一度挑戦しようとしたことがあるのですが、子供向けの文章というのはなんと難しいのだろう…としみじみ感じたものでした。ことばって、本当に奥が深い。興味が尽きません。



この後、映画「風立ちぬ」を観に行き、意外にも金原さんのお話とリンクすることを感じて「こんな偶然もあるのだなぁ」と驚いたのですが、その話はまた後日…(たぶん)。書きたいことはたまっているのですが、ちょっとバタバタな今日この頃です。

 

2013年9月4日水曜日

「むこうがわのあのこ」

ここ数日、まるで嵐のようなお天気が続いていた広島ですが、ようやく晴れ間が見えたので調べもののため図書館へ。そこで何気なく手にとった絵本が、思いがけず心にずっしりきました。

「むこうがわのあのこ」
ジャクリーン・ウッドソン著/さくま ゆみこ訳



柵のこちら側に住んでいる、「くろいわたしたち」。そして、柵の向こう側には「しろいあのこ」が住んでいます。

あの柵を越えてはダメよ。そう言われて過ごす子どもたち。でも、お互いが気になってたまらない。ちょっとずつ、距離がちぢまっていく日々。その様子を見つめる母親の反応や、ラストの子どもたちの会話には重みがあり、胸が痛くなりました。思わず、もう一度はじめから読み返してしまったほど。

最初から最後まで、ひらがなだけで訳されています。なので対象年齢はとても低いのだと思いますが、何度読み返しても年と共に深く味わえる本のように感じました。日本の子どもたちには一見難しいテーマのようにも思えますが、こういった風景が日常の国もあるのですよね。

原作は「The Other Side」。こちらも読んでみたくなりました。

嵐のあとの夕暮れ