2014年2月19日水曜日

ルリユールを知っていますか

ルリユール-何度でもつぶやきたくなる、やさしくてあたたかい響き。フランス語で「本を修復する人」だそうです。

「ルリユールおじさん」という絵本との出会いは、いろいろな偶然が重なってのことでした。雑誌で見かけた「チェロの木」という絵本の水彩画に強く惹かれ、図書館で手に取ったのがきっかけです。作者のいせひでこさんは他にも多くの本を出しておられ、ゴッホの研究家でもあります。

「チェロの木」の次に一気に引き込まれたのが「にいさん」。ゴッホの弟テオの視点から書かれた、情熱あふれる一冊でした。まったく子供向けではなくて、ゴッホを知らない人には何のことか分からないであろう内容ですが、書かずにはいられなかったという思いがひしひしと伝わってきます。

そして「絵描き」。いせさんご自身の絵描きとしての思いや葛藤、そしてゴッホへのやまない憧憬が感じられて、何度も読み返さずにはいられなかった。表紙を見ただけで、あ、となります。

「ルリユールおじさん」は、そんな流れのなかで出会った一冊。いせさんがパリで偶然出会ったルリユールのお話だそうで、そのあたりのことは「旅する絵描き」というエッセイで知りました。

お気に入りの図鑑がバラバラになってしまった少女ソフィーが、ルリユールおじさんと出会う。やわらかな水彩画。少女の無邪気な可愛らしさ。手作業で本を修復していく工程も詳しく描かれています。節くれ立った手が美しい。

人生も終盤に向かおうとしているルリユールと、これからのソフィー。その対比がなんとも言えず。同じルリユールだった父を語る場面も胸にしみる。

電子書籍全盛の時代です。私もKindleにはすごくお世話になっています。だからこそ、この絵本は何度読んでも泣けてしまう。「本屋さんに行けば、新しい図鑑はたくさん売ってる。でも、この本がいいの」というソフィー。それは確かに自分にも覚えがある気持ちで、でもいつの間にか忘れかけていた気持ちでした。

バラバラになったページを手作業で縫い上げて、柔らかくなめした革表紙を付けて金文字を入れる。日本にはないそんな職業が、今もフランスに残っていることに深い感動をおぼえます。

ラストがまた良いのです。絵本でこんなに泣いたのは久しぶり。心からオススメしたい一冊です。

「修復され、じょうぶに装丁されるたびに、
本は、またあたらしいいのちを生きる」

印象に残る一節。紙の本がなくなる時代は来ないんじゃないかな、と願いをこめつつ思います。

感動さめやらず模写をしてみると、さらっと描かれたように見える絵の難しさを思い知る。でも、模写って勉強になるだけじゃなく、描いてるときの作者の気持ちまでなぞれるようで面白いです。

あちゃー

全ページ模写でもしてみたら、少しは上達するんじゃないだろうか…なんて思いつつ、納品と確定申告を済ませるのでした。大人ですから。

自分がルリユールおじさんに一冊、装丁を頼むとしたらどの本だろう。そんなことを考えてみるのも楽しいです。

 

2 件のコメント:

  1. 「ルリユールおじさん」、何度も本屋さんで表紙に惹かれて手にとっているのですが、なぜか中身を読んだことがありませんでしたw なんか表紙で満足して、眺めて書棚に戻す感じで。書名すら覚えてなかったのに、表紙を見てあの本だっ!って気づきました。
    ステキなご紹介だったので、4月の進級のお祝いに子どものプレゼントとして(私には珍しく)新品をどーんと買っちゃおうかしらー。
    ご紹介ありがとうございました。うっちーさんの絵、いつも楽しみにしてますよー。

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    1. かんさん、恐縮ですーw この歳でお絵描きがマイブームとかどうなのって感じですが。ルリユールおじさんは、本が大好きな娘さんにはほんとぴったりだと思う!大人が読むとまた別の味わいもあるし、すごくオススメしたい一冊ですよー(^_-)

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