2013年10月4日金曜日

読書の秋-ときには絵本や俳句など

仕事の合間に積ん読解消に励んでいます。最近読んだ中で、印象に残ったものをメモ。以前から気になっていた「絵本翻訳教室へようこそ」です。



講座形式で分かりやすく、すーっと読める本でした。寝る前に、一日一章くらいのペースで読んだでしょうか。ある絵本を丸ごと一冊、訳していく設定です。

私が仕事で手がけている翻訳は、特許の明細書とドラマなどの字幕。両極端ですが、どちらもかなり特殊な分野のため、他の分野の本はまた新鮮で面白いです。自分がいつも翻訳している文章とは全然違うので、学ぶ点が多くありました。絵も読み解いて訳す、キャラクターが向いている方向が示す意味など、絵本独特の視点。またオノマトペについて、英語は約3000、日本語は約12000という事実にも驚きました。日本語は動詞が少ないからである、と。例えば「笑う」という意味の動詞が英語に何種類あるかと考えると…合点がいきます。日本語はこれを「ニヤニヤ」「クスクス」などオノマトペで表現するわけですね。

黒岩涙香訳「ああ無情」のお話も面白かったです。明治時代の翻訳では、名前も日本語に訳された、と。コゼットは小雪、エポニーヌが疣子、アゼルマが痣子。固有名詞も日本語に訳すよう指示されたという「指輪物語」のエピソードに通じるものがあります。

また、マザーグースの既訳を三種類比較しているページがあるのですが、ここで谷川俊太郎さんの訳に唸りました。個人的な好みもありますが、七五のリズムを保っていて明らかに他と違う。俳句などに繋がる部分もありそうだなぁと。同業の翻訳者の方々の中に俳句好きな方が多いのも、偶然ではない気がします。(実は私も見よう見まねですが、始めてみました…楽しいけれど難しい^^;→ Haiku Note

言葉と向き合う仕事ですから、どんなジャンルからも学ぶことがあるんですよね。オノマトペの話も先日、俳句の本にも出てきたなぁ…などと、後にいろんなことが繋がってくる。

絵本の翻訳料(印税)についても具体的な数字が載っています。一般書の半分くらいで、おそらくこれだけで食べていくのは難しいのだろうなと感じました。最近は、産業翻訳以外ではそんな分野が多いのかもしれません。やりたいことを目指すにしても、いや目指すからこそ、堅実に稼げる分野を持っておくのは大切だと思います。お金は、自由でいるための手段です。たとえば出版翻訳で活躍されている方々も、産業翻訳と両立させている方はたくさんいらっしゃいます。

長くブログを書いてきたためちょくちょく相談メールもいただくのですが、これから目指す方は、華やかでかっこいい業界!なんてイメージに惑わされないでほしいなと思います。ちゃんと独り立ちしてプロとして十分な稼ぎを得ようと覚悟するならば、なかなか厳しい世界です。「稼げなくても楽しいから構わない」という人が集まってしまえば、単価も下落する一方。業界の動きに柔軟に対応していけるよう、アンテナは広く張っておきたいものです。

でも何より大切なのは実力ですね。私もまだまだ学ぶことばかりなので、きちんと底力をつけて日々精進していきたいと気持ちを新たにしました。

そしてたまには脱力も^^



 

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